#Connection:NEORT デジタルアートを取り巻く違和感に挑む
2019.11.01

#Connection:NEORT

デジタルアートを取り巻く違和感に挑む

「デジタルアート」とは、コンピュータなどを使い、何らかの計算処理を行なった芸術作品。であれば、インタラクション性をもつアート作品だけでなく、Photoshopでレタッチを施した写真作品や、DTMによる音楽もデジタルアートと呼べるかもしれない。
デジタルアートの特徴は、各々の作品が違う“ものさし”を持っていることだ。たとえば、ジェネラティブアートとプリレンダーによるモーショングラフィックスは、同じ映像でも、文化の背景が大きく異なる。そういった多文化な表現が集まる場所がWebサービスの「NEORT(ネオルト)」だ。
NEORTのトップページ
#Connection
表現や創造的な活動を支援する立場の企業・組織を紹介する。事業の概要や、Interim Report とのコラボ内容についてインタビュー。
NEORTは、2019年11月6日(水) CIRCUS Tokyoで行なわれる「Interim Report edition4」とコラボレーションする。当日は、NEORT推薦のAtsushi Asakura氏、Hackmarkt氏がInterim Report edition4のメインフロアに出演。ラウンジでは「NEORT: Neo Visual Art Collection」と題した展示を行なう。また、Interim Report edition4のトップページをNEORTユーザーの作品が飾った。

今回はNEORT株式会社の代表・竹元亮太氏に同サービスについて伺った。

NEORTとは



──NEORTはどんなサービスですか?

デジタルアートのプラットフォームです。デジタルアートというのは、コンピュータ技術を使って作る新しいフォーマットのアートと僕は捉えています。従来の伝統的なアートだと、絵画とか彫刻とかスタティックなものがメインだと思うんですけど、テクノロジーを組み合わせることで新しい表現が広がると思っています。そういったアート作品が集まる場所がNEORTですね。

──ユーザー層はどんな感じですか?

まず、登録しているのは1,000人くらいです。大きくいうと、作品を作る人とそうじゃない人に分かれます。実は作る人のほうが少ないんですけど、そのなかだとプログラムを書いてビジュアルを作る人が多いです。それ以外はAfter Effects(Adobe)やCinema 4D(MAXON Computer)といったアプリケーションで作った映像を投稿している人もいますね。

──制作の手法は問わないんですね。

そうですね。そこは意識してコンセプトにしています。今まではたとえば、Processingで作られた作品、GLSLで作られた作品みたいに、プログラミング言語やツール単位で集まるサービスはあったんですけど、それが関係がなく繋がれる場所がNEORTのコンセプトです。



──そのコンセプトに至ったきっかけはなんですか?

僕自身、趣味で作品を作るとき、コーディングだけじゃなくて色んなアプリケーションを使って一つのビジュアルを完成させることがあるんですけど、これをどこに投稿したら良いのか、どういう風に見てもらったら良いのかを迷うんです。いろいろ考えた上でTwitterなんかに投稿するのですが、タイムラインで流れていってしまうのがもったいないなって。もっとコミュニケーションが生まれたり、さらにスキルの学習ができる場所があったら良いなと思ったのが、このコンセプトのきっかけです。垣根を超えた表現で繋がる場所を目指したイメージですね。

集める、広める



──クリエイターがNEORTを使うことでどんなメリットがありますか?

まずひとつは、色んな技術で作られた作品が集まる場所があまりなかったので、そういう意味でのメリットはあります。

そして、NEORTが意識していることは個人のクリエイターさんに活動の機会を与えたいということです。彼らの作る作品がもっと表に出るように、こちらから展示の機会だったり、僕が外部から受けた案件は、積極的にNEORTのクリエイターさんに紹介するようにしていますね。



Photo: NEORT.JP – Medium
2019年 9/12~9/25、東京・渋谷のFabCafe Tokyoで行なわれた展示「NEORT: Neo Visual Art Collection」



Photo: 渋谷駅の巨大地下空間にNEORTのアート作品10点を出展 – PRTIMES
HELLO neo SHIBUYAプロジェクトにて、渋谷駅東口地下広場に展示されるアート作品を提供。期間は2019年11月1日から12月8日


──NEORTのカルチャーとして、目指している形はあったりしますか?

作品自体はもちろんのこと、そこに使われている技術だとか、ノウハウ的なところもオープンになっていくと良いなと思っています。ほかのクリエイターがそこからインスピレーションを受け、さらに技術的なことも学べる。新しい表現が生まれるためにも、さまざまな面でオープンな場所にしていきたいですね。

──もっとこういう人に使ってほしいというのはありますか?

いま少ないのはプリレンダーで映像を作る人ですね。After Effectsでモーショングラフィックスを作っている人だとか、アニメーションを作っている人だとか。実写映像もぜんぜんOKなので、コーディングで映像を作る人以外にもどんどん参加してほしいです。あとは初心者の方ですね。NEORTがデジタルアートを作る人たちにとっての入り口になれたら最高です。



──Interim Reportとコラボすることにどんなメリットを感じますか?

今回お話をいただく以前から、実はお客さんとして遊びに行っていました。あんまりこういう感じのイベントって多くないじゃないですか? エッジが立っていてすごい面白いことしている印象があったので、面白い試みができそうだなと思って。もともとイベントとしての興味もありましたけど、クリエイターさんの活動の幅を広げるきっかけにもなるので。

──Interim Report edition4では、ラウンジフロアでNEORTに投稿しているクリエイターの作品展示や、イベントサイトでのコラボが行なわれますよね。これはどういった試みなのでしょうか?

NEORTに参加しているクリエイターとその作品を、複数のモニターで表示するもので、一定時間ごとに切り替わっていきます。作品の品質、投稿頻度の高さを基準として、自動でNEORT上のクリエイターを紹介していくシステムといった感じです。

イベントサイトで使われている作品の選び方は少し違っていて、NEORTに投稿されている作品の中から、Interim Reportやサイト自体の雰囲気にマッチするようなものを人力で選びました。例えば、色合いが綺麗か、表現が前衛的か、という基準でしたね。

NEORTはクリエイターの活動を支援することをミッションにしているので、展示や制作案件をクリエイターに紹介するみたいなことをやっているのですが、良いものを作っているのにまだ僕らが紹介できてない人をチョイスするようにしてます。

──Webのプラットフォームとして完結させるわけではなく、現実空間でも作品を露出するのはなぜでしょうか?

リアルに楽しめる場所を増やしたいんですよね。スマホとかPCの画面を覗きながら作品を鑑賞するのってあんまり自然じゃない気がしていて。すごい能動的なので。この前のFabCafe Tokyoでの展示がまさにそうですが、空間のなかに作品があったり、街中で目に入るような鑑賞体験も提供しています。

NEORTができることは、人々の生活のなかに作品をさりげなく出してあげる、みたいなことだと思っているので。

ユーザーから見たNEORT


NEORTユーザーとしてクリエイターののAtsushi Asakura氏(NEORTアカウント)にも同席いただいた。Interim Report edition4ではNEORTがキュレーションしたVJとして出演する

──ユーザーのAtsushi Asakuraさんから見たNEORTはいかがでしょうか?

いままで作品を作っても投稿する場所がなかったので、とても良いですね。これまでは作品を作ったとしてもキャプチャして小さい動画をTwitterに載せるぐらいしか他の人に見てもらう方法がありませんでした。 この前のFabCafe Tokyoのように、リアルな場に作品を置く機会が提供されるのもありがたいですね。

──NEORTがあることによって、活動に影響はありましたか?

NEORTに投稿すると、色んなジャンルの人に見てもらえるので、その点は影響が大きいですね。さっきの話でも出たようにProcessingだったらOpenProcessing、シェーダーだったらShadertoyなどのように、ツールごとに集まる場所はあるのですが、一方NEORTは、映像表現をやっている人に広く届くのが良いです。

それと、なかには画面の半分がソースコードみたいな投稿サービスもあるので、全画面で作品が表示されるのも良いですね。




──NEORTがキュレーションしたVJとしてInterim Report edition4に出演されますが、どのようなパフォーマンスをする予定ですか?

抽象的なイメージと具象的なオブジェクトを組み合わせた、独特な質感のあるCG表現に興味があります。これまでNEORTで試してきた表現を踏まえつつ、今回はリアルタイムレンダリングの特性を活かして、オーディオリアクティブなVJに挑戦します。ソフトウェアはWebGL、Web Audio API、Web MIDI APIを使って、ブラウザで動くVJソフトをフルスクラッチで書いています。

──これからのNEORT、どういうところに期待したいですか?

NEORTの面白いところは、似たようなことをやっているけど微妙に関わりのない人たちが来ることなんですよね。デモシーンのクリエイターとか、プリレンダーのクリエイターとか、いろんな人が投稿しているので、もっとユーザーが増えて欲しいと思っています。自分へのインプットにもなるので。意外と制作物ってツールに影響されるというか、TouchDesignerっぽい画とか、Unityっぽい画ってあるので、ほかのツールで表現されたものを見て、自分の表現にも反映してみたいです。
NEORT
「技術×芸術で世界をより創造的な場所に」をビジョンにクリエイターの創造活動支援をメインに行うスタートアップ。
デジタルアートの表現と知識のプラットフォーム「NEORT」の開発・運営を行う。
山本勇磨
text
稲垣謙一
photo
山本恭輔
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