2019.11.05

#backstage : kyoheifujita × ボルコアンテス

あえて欠けることで表現する奥行き

音楽への深い造詣を背景に、電子音楽とクラシック音楽の次の形を目指すkyoheifujitaと、ドット絵からアンビエントミュージック、ブロックチェーン開発など、あまりに多様な表現活動を展開するボルコアンテス(ヘルミッペ / 高崎悠介)。個性の塊のような両者が口にしたのは、自らが欠けることで生み出される相乗効果。Interim Report edition4でのパフォーマンス内容について話を聞いた。(高崎悠介氏は取材不参加)
#backstage
2019年11月6日(水)にCIRCUS Tokyoで開催の「Interim Report edition4」に出演するパフォーマーの舞台裏に迫る。 Interim Report edition4

kyoheifujitaがボルコアンテスを指名



──kyoheifujita(以下、藤田)さんからボルコアンテスさんをご指名いただきました。そこに至る経緯を教えてください。

ヘルミッペ : 知り合ったキッカケは、たぶん去年のSquare Sounds Tokyo 2019だと思います。

藤田 : そうなんですよ、割と最近。

ヘルミッペ : ライブで共演するのも初めてですね。

──初めてなんですね。

藤田 : ドット絵って、どうしてもレトロゲームからの文脈があるので、かわいい画が多いんですよ。それはそれで良いのですが、あんまり媚がないというか、そこにスッとあるだけで佇まいが美しいなと思うものを作られる方って多くはなくて、僕の中ではそれが、前回のInterim Report edition3で一緒に出演させてもらったm7kenjiや、ヘルミッペさんで。いつか一緒にやりたいねって話はしていたので、今回声をかけさせていただきました。

Interim Report edition3 | After Movie

──ヘルミッペさんはお誘いを受けてどうでしたか?

ヘルミッペ : 僕がVJで出演させていただいたことがあるSquare Sounds Tokyoとかだと、チップチューン寄りの音楽の演者が10組くらいいて、自分が担当するのはそのうち3組とかなんです。初対面でいままで作品を聞いたことがなかった人のVJを一日に何度もやって、それも2DAYSとかなので、手法を分けてみたりとか、配分を考えてみたり、全体の雰囲気を考えたりすることが多くて。

でも今回は、僕の好きな音楽を作る藤田さんだけを担当するということで、僕にとっては新しい挑戦ですし、楽しそうだなと思いました。

自らは、あえて欠ける



──現場での対応力に頼るのではなく、前持って連携の取れたパフォーマンスになりそうですね。

ヘルミッペ : 藤田さんはいわゆるチップチューンという感じではないので、そこにマッチする表現をしたいなと思っています。キャラの動きがダイナミックだとか、場面転換がスムーズだとかっていう通常のチップチューンに求められるゲームらしさではなくて、シーンごとの一枚画から、ちゃんと前後に物語性や情緒を感じてもらえることを意識していま制作しています。これはまだ途中なんですが、不思議な風景で何かが起こってる感じとか、そこに人がいる様子とか。



──この人、これから死んじゃうんじゃないかっていう雰囲気ですね。

ヘルミッペ : そんな風に、見る人によってその先の展開を思い描いてしまいそうな、余白のある画を目指している感じです。

──その物語性っていうのは、藤田さんの曲から影響を受けているのですか?

ヘルミッペ : 建物とか、あまり木の生えていない山並みとか、自然しかないのに電線があるとか、そういったオブジェクトは曲のイメージから来ています。男の人物像はそこからできた世界観に合わせていて、物語はひとつではなくカット毎に感じてもらえたらなと。



──逆に藤田さんは、ヘルミッペさんの画からインスパイアされて作る部分もあるのですか?

藤田 : 実際にプレイする音源を事前に共有して、それを受けてヘルミッペさんから画が返ってきたので、今度は逆に僕がそれに合わせる調整しています。音楽だけで鑑賞すると、起承転結がほしくなったりすることもあると思うんですけど、画があることで相互補完し合って、音だけ聞くとどこか欠けたようなものだとしても、画がセットになって初めて面白いなって感じる表現をやってみたくて。

もうひとつは、音をひとつひとつを聞くとチップチューンなんだけど、音楽としてはどちらかというとエレクトロニカっぽく聞こえる音作りを目指していて、今後しばらくそれをコンセプトにやっていこうかなと思っているんです。チップトロニカって勝手に呼んでるんですけど、今回はそれも試したいですね。

ドット絵界隈でも異彩を放つボルコアンテス



──ボルコアンテス(ヘルミッペ / 高崎悠介)さんについて教えてください。

ヘルミッペ : 僕はいまお笑い事務所のタイタンで仕事をしているんですけど、そこで高崎と一緒に、芸人さんの企画をしたり、個人でも一緒に何かを作ったりしていて、その流れで始まりました。

例えば、僕が作ったループ素材を高崎に渡して、TouchDesigner(Derivative)を使ってMIDIコンとかで操作できるようにしたり、アナログのビデオシンセに通してみたりとか。網に絵の具を垂らしてドット絵を書いてみたり、5mm角の判子を作って押していくとか(笑)元々はライブペイントオンリーのVJだったんですよね。ちなみにこれは、Square Sounds TokyoでVJしたときに書いたやつです。

この投稿をInstagramで見る

鳥戦士 #ドット絵 #pixels #pixelart #illustration #drawing #8bit #1bit

komiyama takashi(@hermippe_pixelart)がシェアした投稿 -


藤田 : 鳥かな?って思って見てたら、だんだん人の足が生えてくるっていう(笑)

──えっ、笑かしたいんですか?(笑)

ヘルミッペ : いやっ…!書きながら考えたんでよくわからないんですが、驚かせたいとは思ってました。

藤田 : それ言ってましたね。「鳥だと思ったやろ〜!」って(笑)

──高崎さんとの制作プロセスはどんな感じなんですか?

ヘルミッペ : 週3くらいで会うので、お互いにやりたいことをよく話し合って決めていく感じですね。ちなみに別件でやろうとしているものだと、アナログなVJでLEDとか偏光板を使ったりとか、そういうのもあります。ちなみに、ボルコアンテスはVJ名義なのですが、高崎は本当に天才的に何でもできるので、一緒にブロックチェーンを使った作品を作ったり、モジュラーシンセを作ったり、アンビエントミュージックを作ったり、他にも色んなことをやっています。

──めちゃくちゃ多彩ですね…!いつもの型があるわけでなくて、毎回違った試みをやるんですね。

ヘルミッペ : そうですね、いつも何かしらの新しい実験をやることが目的という感じで。

IR3から連続出演のkyoheifujita。m7kenji氏と組んだ前回からの変化

Photo : 川村将貴

──ちなみに藤田さんは、前回はm7kenjiさんと共演されましたが、意識に違いはありますか?

藤田 : 先ほど、今回は僕がヘルミッペさんに寄せていこうとしているとお話しましたが、前回は僕が作りたいように作ったものに対して、ケンジ(m7kenji)が映像を勝手に作ってくれるという感じだったので、そこが大きく違いますね。

──なるほど。m7kenjiさんとのコンビではUSAGI STEPが印象的でしたが、藤田さんとしては予想してなかったんですね。

藤田 : あ、そうです(笑)あの曲は特に映像化する予定もなくて、IR3用にライブ映えする曲を作ってみたものだったんですけど、気づいたらウサギが乗っていました。モチーフというかマスコットキャラとしてのウサギは、ずっと前にボーカルユニットをやっていた頃からあって、その頃からケンジがVJだったので、その流れはあります。



──どうしてウサギのモチーフなんですか?

藤田 : そのボーカルユニットが「ウサギのへいたいは待機。」って名前で、その語呂が面白くて良いなって思ってから、愛着が湧いてきました。今度リリースするアルバムのジャケットにもウサギはいます。

ヘルミッペ : そういえば、こないだケンジさん(m7kenji)が、藤田さんから上がってきた曲のイメージを聞いて、ちょっと迷ってる様子で、変えるかもって言ってたよ。

藤田 : えっ!僕はすごく現状でしっくりきてるのに、あいつ俺に言わないで勝手に!(笑)

一同 : (笑)

藤田 : ケンジ(m7kenji)とは付き合いも長くて仲良しなので、より良いものを作るために遠慮なくやりあえるのは良いところで(笑)逆にヘルミッペさんとやるのは今回が初めてなので、普段よりは緊張感があって、それもまた良いですね。

えっと、機材トラブルだけないように、いやあの、充電なんですけど…(笑)

──ヘルミッペさん、知ってますかこの話。前回、藤田さんとm7kenjiさんのコンビでご出演いただいた時、出番のタイミングで二人揃ってラップトップの充電がなくなったんですよ(笑)

ヘルミッペ : 社会人にあるまじきことですね、そんな話は他で聞いたことないです(笑)

一同 : (笑)

──出演者様には、失敗しても良いから自分なりの挑戦をする場として利用してほしいというメッセージを込めて、その様子をIR4の告知で公式にイジらせていただきました(笑)

ヘルミッペ : これは勇気を与えてくれるメッセージですね(笑)

鑑賞者の想像力にその先を委ねる



──最後に、Interim Report edition4ではここを見てくれ!ってところひとつ挙げるとしたら?

ヘルミッペ : 音も画も、余白を残した表現になっていると思うので、鑑賞者の方が、具体的に描かれていない部分を想像で補ってくれるような、聞こえてない、見えてないところから、自分の中で組み立ててくれるようなものができると素敵だなと思います。

ストーリー性とか、ナラティブな感じだとか、意識して作っているので、そういう隠れた部分を感じてもらえたら嬉しいですね。どうでしょうか藤田さん。

藤田 : 良いと思います!

ヘルミッペ : よし!
kyoheifujita
都内を中心に活動する音楽家。チップチューンをベースにクラシック、エレクトロニカなどの要素を合わせた独自の音楽を作る。
ヘルミッペ
イラストレーター/刺繍作家。ドット絵で暗い雰囲気の絵を書く。
川村将貴
photo
山本恭輔
edit

Related